吉川浩満
ISBN-13: 9784480438348
人間は不合理なロボットである
マルクス・ガブリエルが「考えるという感覚/思考の意味」で「人間は人工知性だ」と言っていたのと近いような気がする。
田中博基我々の人間観や社会観を考えるうえでも、進化理論の大衆的受容は重要なテーマである。科学理論の受容において決まって問題となるのは、その誤解や誤用である。進化理論の場合、差別的または日和見主義的な進化思想や優生思想の横行にそれが顕著である。
まったくその通りの状況であると思うのだが、私自身、「どうもこの進化論の装いをしている論は胡散臭いな」などと思うことはできても「では科学的に正しい進化論はいかなるものなのか」ということがなかなか把握できずにいる。遺伝学者の知り合いに「歌うカタツムリ」という本を読むといい、と言われたが、まだ読めていない。
田中博基(『サピエンス全史』は)「ちょっと読んでおかないとまずいんじゃないか」と思わせる本ですね。(中略)政財界の名士たちの名前とともに紹介されることが多いので、なんだかミーハーな感じがして嫌だなと敬遠している人もいるかもしれませんね。でも、そういう硬派な読書人ほど、実際に読んでみれば感嘆するはずです。とてもよく書けていますから。
まさに引用箇所のような理由で食わず嫌いをしてしまっている。そして,この引用箇所から想像するに,似たような食わず嫌いをしている人は一定数いるみたいだ。ということは,ちょっとマーケティング失敗してる?
田中博基国立情報学研究所の新井紀子らによる「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトも忘れてはならない。なんらかのブレイクスルーがないかぎり東大合格は不可能という結論でプロジェクトは打ち切られたが、その過程で当の人間の読解力不足の問題が提起されるなどして、第一次・第二次ブームに見られたような「人間の解剖は猿の解剖のための鍵である」式の知見をもたらした。典型的な「失敗による成功」事例といえる。
私は、新井さんのプロジェクトが「東ロボくん」から読解力不足の話へと移行しているのを「失敗を誤魔化そうとしているんじゃないのか」と否定的に見ていたが、このように肯定的に評価することもできるのだなと思って、新鮮な気持ちになった。
田中博基第三次AIブームもかなり沈静化したように見えるが(後略)
2022年頃ってそうだったんだっけ,と4年前の記憶がなくなっていることに呆然としたが,冬の時代となる前に新たな潮流が起こってきたと思う。2010年代中頃には,人工知能研究者も「まあそろそろAIブームも終わるだろう」というようなことを言っていた記憶があるのだが,実際はそうでもなかったなと思う。未来のことってわからないもんだな。
田中博基哲学にあまり親しくない人や、哲学とは永遠普遍の真理の探究だと思っている人には意外なことかもしれないが、哲学というのはきわめて流行り廃りの激しい学問分野である。(中略)先端的な哲学者は、ある種ファッションリーダーのように時代の雰囲気を先取りするようなところがある。
このことは,哲学研究者にレッスンしてもらったときに知って,大いに驚いた。まさに「哲学とは永遠普遍の真理の探究」と思い込んでいたので,マルクス・ガブリエルが現代の時代状況を色濃く反映した議論を展開するのに「随分踏み込んでいるのではないか」という感想を表明したところ,すぐれた哲学者というのはその時々の時代状況に敏感に応答してものを書いているのだということを教わった。同様の誤解を抱いているひとは多いかもしれない。
田中博基よろしくお願いします。パフェ頼んでもいいですか
---どうぞ、どうぞ
ありがとうございます。いただきます。
インタビュー記事だが,なんでこんな部分までカットせずに収録したんだよ笑
田中博基編集者は実質的な共著者であるとはよくいわれることだが、実際そのとおりである。あまり自発的にものを考えることのできない私は、いつも編集者からの出題をたよりにしている。
そういう著述のスタイルもあるのだな、と思った。どれもめちゃくちゃ深い考察だと思うのだが、それらは必ずしも自発的ではなかったと著者が言っているのは興味深かった。
田中博基